ikiune diary 日々の出来事

息畝実/イキウネミノルが、その日見たり感じたことを綴ります。

8月12日

「さあ、よく考えて。私に手を貸してくれることは出来ないの?」
「あなたの手を借りたいの、あの亡骸を抱きあげるために」

今日も12時過ぎから新宿を歩く。これで3日連続です。

新宿にいると、もしかしたら『アンティゴネー』を買ったあの人に出逢えるのではないかと期待してしまいます。

夕方、今日は彼女はいないのかなと諦めて、私はお腹が空いたので家に帰ろうと新宿駅に向かいました。

そして駅前の遊歩道にあるエスカレーターを下り顔を上げると、目の前になんとあの彼女がいたのです。

私はしばらくの間立ち止まってしまいました。

何十秒か、何分か、はっきりした時間は分かりませんが、私は彼女をみつめていました。

すると彼女が私に気づいて、確かに私を見かえしてきたのです。

びっくりしましたが、私は慌てることなく、かつ迅速に鞄を開け、2日前に買った新潮文庫の『オイディプス・アンティゴネ』を取り出し、彼女の方に向けて見せました。

彼女はそれを見て、目の前を通りすぎていく。

彼女が去ったあと、私は急に笑いが堪えきれなくなりました。

頭のなかで様々な想像がめぐる。

私は彼女を主人公にした作品を作りたい。

いや、もう既に作っている最中なのだ。