8月15日
「かれは彼女のひとみをのぞきこんだ。水のようにきれいに澄んでいるふた粒のしずく。そのなかに、くらく小さく、かれのすがたが浮きがあがって見える。こまかな点までが明瞭に。なにもかもくっきり映っている。口のまわりの線までが・・・・・・それはちょうど、彼女の紫がかったコハク色のひとみが、奇跡をあらわす魔法の玉かなにかにかわって、かれをそっくり、なかにとじこめてしまったのかと思われた。」
「それでは、なんであろうか? 奇妙なくらい心を落ちつかせる、異常なほどのやさしさではためく蝋燭の灯といおうか。いつか子供のころ、停電があった。一本だけのこっていたろうそくをさがし出して、灯をともした。わずか一時間ほどのあいだだったが、それでも、古い時代のものがもっている効能を、あらあめて認識する機会をもった」
以前、購入した『華氏451度』を読みすすめる。
主人公は17歳の少女に理由もなくひかれている。それは私があのひとに対して抱く感情と似ています。
あの時、私は彼女の目をずっと見ていた。数秒間だが、彼女と目があった。その目は、黒く、深く、吸いこまれていく。それは僕を包みこむ。
彼女の本当の姿を造りあげたい。私は彼女の物語を作らなければならない。