ikiune diary 日々の出来事

息畝実/イキウネミノルが、その日見たり感じたことを綴ります。

8月30日

昨日、彼女に渡せなかった脚本が手元にある。

紙とインクは不思議だ。それが物質としてあるということだけで、何か深い意味を勝手に見出してしまう。手にすることができ少しの重さがあるだけで安心してしまう。不思議なものだ。

夏の夕焼け空の下で、私はこの少し汗で萎れてしまった紙の束を彼女に手渡そうとした。でも、結局それは彼女に触れられることはなかった。

私は仕方がないので、その文字が彼女の声で朗読される場面を思い浮かべる。その声は少しうわずったような、優しい声だ。私にとってかけがえのない声。

アンティゴネーの声、私の書いた文章が重なりあい反響している。